※本記事に書かれている内容について、筆者は何の責任も持ちません。ここに書かれていることを貴方が他の人に喋った時にどんな顔をされても、それは筆者のせいではありません。自分のケツは自分で拭いてください。
昨年12月、こちらの記事の中で、『トロピカル~ジュ!プリキュア』(以下、『トロプリ』)が『ウルトラマンティガ』(以下、『ティガ』)25周年記念作品であるということを解き明かした。
『トロプリ』を制作する東映アニメーションが周到に組み込んだ『ティガ』オマージュの数々。そこには『ティガ』への深い敬意と愛が幾重にも折り重なっており、そこから得た感動は、『トロプリ』放送終了から暫く経った今でも、昨日のことのように思い出せる。
本家ウルトラシリーズの方では『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』が“『ティガ』25周年記念作品”の看板を掲げていた。2つの『ティガ』25周年記念作品が土日の2日連続で放送されていたのだから、昨年は『ティガ』世代の筆者にとって、それはもうたまらない年であった。
そして、本年、2022年。『ティガ』25周年が終われば、次に来るのは、そう、『ウルトラマンダイナ』(以下:ダイナ)の25周年である。
本家ウルトラシリーズでは『トリガー』と同じ世界観で、“NEW GENERATION DYNA”の名こそ冠していないが、『ダイナ』要素を色濃く受け継いだ『ウルトラマンデッカー』(以下、『デッカー』)の放送が始まった。
一方プリキュアシリーズは現在『デリシャスパーティ♡プリキュア』(以下、『デパプリ』)が放送中である。「ごはんは笑顔」をテーマに、食に関する心温まるドラマが展開されており、『デッカー』と併せ、筆者は今年も土日がとても楽しい。
そこで思ったのだが、『ティガ』25周年記念作品である『トリガー』と同時期の『トロプリ』がティガ25周年記念だったのだから、『ダイナ』25周年記念作品である『デッカー』と同時期に放送されている『デパプリ』も、実は『ダイナ』25周年記念作品なのではないか?
そのような疑問が胸をよぎった筆者は、早速調査を開始した。すると、出るわ出るわ『ダイナ』オマージュが。TVシリーズだけでなく小説版の内容に至るまで。
やはり推測通り、『デパプリ』は『ダイナ』25周年記念作品であった。本記事では、『デパプリ』に込められた、コメコメされた、『ダイナ』要素を解き明かしていきたい。
■TからDへの継承
『ウルトラマンティガ(Tiga)』から『ウルトラマンダイナ(Dyna)』へ。
『ウルトラマントリガー(Trigger)』から『ウルトラマンデッカー(Decker)』へ。
『トロピカル~ジュ!プリキュア(Tropical)』から『デリシャスパーティ♡プリキュア(Delicious)』へ。
TからDへの継承。
そもそも番組タイトルからして、隠す気が無いのである。全く、泣かせてくれる。
WOWWOWダイナ。ブラぺの正体は誰だダイナ。品田拓海さんだ。ウルトラマンダイナ。WOW。
■ダイナ3タイプとデパプリ初期メンバー3人の能力
ウルトラマンダイナは、状況に応じて3つの姿(タイプ)を切り替えて戦う。
バランスに優れたフラッシュタイプ。超能力に長けるミラクルタイプ。パワーファイトがウリのストロングタイプの3つである。
これはデパプリ初期メンバー3人の配置と見事符合する。
フラッシュ……“光”。色で表すとすれば黄色である。即ちキュアヤムヤムである。青を基調とした超能力戦士……どこからどう見てもキュアスパイシーである。パワーファイトを信条とする戦士……どう考えても1000キロカロリーパンチを得意とするキュアプレシャスである。
■主人公の道標となる、家族の言葉
『ダイナ』の主人公であるアスカ・シンは、かつて光に消えた父・カズマを目標としている。アスカが困難に直面した時、道標となるのはいつもカズマが遺した言葉であった。
一方、『デパプリ』の主人公である和実ゆいも、祖母・よねが遺した言葉を胸に生きている。「ごはんは笑顔」に代表されるよねの語録は、ゆいだけでなく、デパプリメンバー全員の危機を救う道標になってきた。
今はそばにいない家族の言葉が主人公を導く。これはどう考えても『ダイナ』オマージュである。
また、カズマとよねには別の共通点もある。
『ダイナ』のメインライターである長谷川圭一氏が執筆した小説『ウルトラマンダイナ 未来へのゼロドライブ』において、ウルトラマンダイナの正体が、光となったカズマであることが明らかになった。私はこの小説は未読であるが、『ダイナ』放送終了から20年以上の時が経過してから判明した衝撃の事実のため、この情報だけは真っ先に耳に入って来た。アスカ・シンが追いかけていた父・カズマは、実は第1話からずっと彼のそばにいたのである。
一方、デパプリのナレーション、所謂“天の声”に着目したい。作中では伏せられているが、まぁ、普通に考えて天の声の正体はよねであろう。両者はどう聴いても同じ声である。
第1話からずっと視聴者の身近にいるのに正体がハッキリしない存在が、実は主人公の家族だった。
こんな共通点、偶然発生するはずがない。これもまた『デパプリ』に内包される『ダイナ』オマージュと言えよう。
■パムパムの語尾
芙羽ここね(キュアスパイシー)の相棒であるエナジー妖精・パムパム。ちょっぴりおませでお調子家、ここねのことが大好きパム。語尾にパムがつくパム。
あ?今なんて言った?
パム。
パムー。
これはどう考えても『ダイナ』に登場するスーパーGUTSのマスコット・ハネジローの語尾「パムー」のオマージュである。
更にもう一つ、衝撃の事実がある。
『デッカー』に登場するAIユニット、HANE2。ハネジローのオマージュキャラクターである。
声を担当しているのは土田大氏。土田氏は『忍者戦隊カクレンジャー』において、サイゾウ(ニンジャブルー)を演じていた。
そう、ブルー。青の戦士である。
これはキュアスパイシーのイメージカラーと見事符合する。
こんなことが偶然起こるはずはない。『ダイナ』『デパプリ』『デッカー』『カクレンジャー』、4つの作品を股にかけた、壮大なオマージュ合戦なのである。
■ジェントルーに込められた『ダイナ』キャラクターの要素
『デパプリ』序盤において立ちはだかるライバルキャラ・怪盗ジェントルー。レシピッピを奪う怪盗であり、黒いマントをはためかせて暗躍する強敵である。
怪盗?黒いマント?ピンときた方も多いだろう。
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— ぞひ丸 (@zohimaru000) September 18, 2022
そう、これは明らかに『ダイナ』第12話「怪盗ヒマラ」に登場する、怪宇宙人ヒマラのオマージュである。
また、『デパプリ』第6話「学校!怪物!大パニック!?ねらわれたエビフライ!」を見ると、ジェントルーに込められたもうひとつの『ダイナ』オマージュを確認できる。
学校に現れたジェントルーが、ウバウゾーに怯える女子生徒3人組を用具入れに閉じ込めるシーン。一見、悪役らしい非道な行いに見えるが、後にこれはジェントルーが無関係な生徒を巻き込まないための処置として行ったものだということが明かされる。
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これは、『ダイナ』第31話「死闘!ダイナVSダイナ」でグレゴール人扮するにせウルトラマンダイナが、街に巨大な剣を刺して疑似的なリングを形成することで、無関係な地球の人々を傷つけないようにしたシーンのオマージュであることは明白である。
また、グレゴール人もジェントルーやヒマラ同様、普段は黒いマントを羽織っていることも見逃せない。
狙ったかのように、『デッカー』でグレゴール人というキャラクターは再登場し、まさかのソフビ化も果たされた。(『ダイナ』に登場したのとは別人だが)
いや、実際、狙ったのであろう。『デパプリ』制作陣への返礼として。
敵役でありながら、どこか紳士的な一面を持ち、憎めない。ヒマラとグレゴール人がジェントルーのキャラクター造形に大きな影響を与えたことは明白である。
■双子の兄弟
菓彩あまね(キュアフィナーレ)には、ゆあんとみつきという双子の兄がいる。
もう、察しの良い方はお気づきのことであろう。
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— ぞひ丸 (@zohimaru000) September 18, 2022
そう、これは『ダイナ』第27話「怪獣ゲーム」に登場した双体宇宙人チェーン星人のオマージュである。
1人が武闘派、もう1人が理知的というキャラ分けまで共通しており、もはや筆者は、ゆあんとみつきは実はあまねとは血が繋がっておらず、チェーン星人なのではないかと勘繰ってしまう。
菓彩兄弟の行く末までもこのままチェーン星人をなぞっていくのだとすれば、武闘派のゆあんは爆発の炎に巻き込まれて全身火だるまになってしまうし、余裕をかましているみつきも、最終的にはゆあん共々倒壊する建物の下敷きになってしまう。
あまねには、くれぐれも2人から目を離さずに見守っていてほしいものである。
■轟さんとアスカの1人ランチ
『デパプリ』第15話「ドキドキ!ここね、はじめてのピクニック!」では、クラスの皆とのピクニックに気合を入れすぎたここねが、奮闘むなしく空回りしてしまう。
ここで見事なアフターフォローを見せたのが、運転手の轟さん。「仕事が忙しくて食事を疎かにしていたころ、1人で食べたホットドッグの美味しさに心救われた」という自らの実体験を話し、“大勢での食事”に気を取られすぎていたここねを優しく励ました。
『デパプリ』は“大勢での食事”の楽しさ、素晴らしさをメインに描くことが多いが、それだけではない。1人で落ち着いてゆっくりと摂る食事の大切さやその価値も、決してないがしろにせず肯定的に描く。極めて現代的なアプローチの作品である。
この轟さんのエピソード、実は『ダイナ』第31話「死闘!ダイナVSダイナ」に全く同じシーンがある。
あのアスカ・シンも、1人でベンチに腰掛けながら美味しそうにドでかいサンドイッチを頬張っていたのである。
しかも、その緊張感の無い様子をカメラ少女のナツミに撮られたアスカは、「写真を週刊誌に送られたくなければTPC基地を撮影させろ」と脅されてしまう。
このように『ダイナ』においては「1人でパンを食べるシーン」は主人公に社会的な死が迫るという緊迫したものだったのだが、『デパプリ』では落ち込む少女の心を救済することとなった。
オマージュを込めつつ、コメコメしつつ、オマージュ元とは真逆の展開を描く。ただのシーンの再生産ではない、素晴らしい引用の仕方である。『デパプリ』制作陣の『ダイナ』への敬意と気高さを評価したい。
■F(フィナーレ)計画
『ダイナ』最終章でゴンドウ参謀が再開させた人造ウルトラマン製造計画、“F計画”。
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上手くいけば人類はウルトラマンを戦力として所有できたのだが、人造ウルトラマン・テラノイドはスフィアに憑りつかれてゼルガノイドへと変貌してしまった。
実は『デパプリ』にも“F”の名を冠するプリキュアがいる。そう、キュアフィナーレである。
フィナーレばかりではない。キュアフィナーレの前身である怪盗ジェントルー(Gentle)。彼女の名前には“T”の文字が含まれている。
これはテラノイドの頭文字と見事に符合するのである。
F計画とテラノイドとゼルガノイドに対する、ジェントルーとキュアフィナーレ。これは明らかに『デパプリ』制作陣による『ダイナ』オマージュである。
人類の味方になるはずだったテラノイドはゼルガノイドへと変貌し、人類の敵となってしまった。
それに対し、当初は敵であったジェントルーは仲間たちの協力のもと、葛藤を乗り越えてキュアフィナーレへと生まれ変わった。
これは、『ダイナ』放送当時、悲劇的にそのキャラクター生命を終えたテラノイドへの、『デパプリ』制作陣からの救済とは言えないだろうか。
■テラノイド田志保
『デパプリ』の劇伴を担当するのは、寺田志保氏である。寺田氏は『ヒーリングっど♥プリキュア』から3年連続でプリキュアの劇伴を担当しており、シリーズのファンにとってはすっかりお馴染みの方である。
寺田氏が『デパプリ』を担当することになったのは前2作の功績もあるが、実はそれだけではない。“寺田志保”という名前には、テラノイドの“テラ”が含まれていることを見逃してはいけない。
『ダイナ』25周年記念作品である『デパプリ』の劇伴を担当するのは、やはりどこかで『ダイナ』と縁のある方でなくてはならない。
『デパプリ』制作陣はそのように考えたのであろう。前2作で実績もある寺田氏の名にテラノイドの息吹がこもっていることに気づいたときは、普段は冷静な『デパプリ』制作陣も「見たかぁ!!!!!俺の超ファインプレー!!!!!」と、思わず興奮したに違いない。
そして極めつけは、『デッカー』のエンディングテーマ「カナタトオク」。
編曲担当は寺田氏である。
■ブラぺの気持ち
ゆいの幼馴染である品田拓海が変身するクックファイター・ブラックペッパー。通称ブラぺ。彼を突き動かすのは、ゆいを守りたいという強い想いである。
私はベラベラと野暮なことは言わない。彼の気持ち、それは……。
■総括
このように、『デパプリ』が『ダイナ』25周年記念作品であることは明白であり、2年連続で東映アニメーションと円谷プロの間で愛と温かさに溢れた交流が続いていることに、筆者は涙を禁じ得ない。
『デパプリ』も『デッカー』も、面白さと戦いの激しさは今後より一層増していくであろう。『ダイナ』25周年という重い看板を背負っている両作であるが、筆者は全身全霊をもって応援していきたい。
本当の戦いは、ここからだぜ!