イータイコト・イータイ

怪獣とヒーローと任天堂が好きな20代男が言いたいことを言いたいように言うブログ。

『仮面ライダーBLACK SUN』への、正直な感想。

予告編

 

※本記事は『仮面ライダーBLACK SUN』及び関連作品のネタバレを含みます。また、作品の内容に関して批判的な論調ですので、ご注意ください。

 

仮面ライダーBLACK SUN』(以下、今作)を観た。全10話。配信開始日の0時から1話だけを観て興奮し、その日の夜に第2話を、翌日に残りの8話分を一気に鑑賞した。先週の金・土曜のことだ。その翌日の日曜には、1日中今作のことを考えていた。まさにBLACK SUN漬けの週末だった。

 

 

 

natalie.mu

 

 

今作はアニメ版『風都探偵』と来年公開の『シン・仮面ライダーと並び、仮面ライダー生誕50周年記念企画作品」の看板を掲げて制作された。

 

 

 

www.famitsu.com

 

 

監督は『凶悪』『孤狼の血などで知られる白石和彌が務め、主役の南光太郎(仮面ライダーBLACKSUN)と秋月信彦(仮面ライダーSHADOWMOON)にそれぞれ西島秀俊中村倫也がキャスティングされるなど、今までの仮面ライダー作品とは一線を画した「一般層向け」の布陣が敷かれた。初報を目にしたときは大いに興奮したことを覚えている。

 

 

 

 

そのような東映の「本気度」が窺えた今作。先週末を全て本作に費やしたといっても過言ではない私ぞひ丸は、どのように感じたのか。以下、ネタバレありで語ってみたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まっっっっったく、ノれなかった…………。

 

 

 

 

楽しみにしていた分、ダメージも大きい。正直、ショックで軽く眩暈を感じた。

 

 

 

 

何が駄目だったのか。何がノれなかったのか。要因は大きく2つある。

 

 

 

 

 

■キングストーン周りのチグハグ

 

 

 

 

今作のキーアイテム、キングストーン。原典の仮面ライダーBLACK(以下、『BLACK』もしくは原典)では、2人の世紀王ブラックサンとシャドームーンの力の源であり、どちらかがもう1人のキングストーンを奪い、2つを揃えることで新たな創世王が誕生する、という設定だった。

 

 

 

 

今作では、第1話の冒頭から少年期の光太郎と信彦にキングストーンが埋め込まれる場面が描かれる。お互いの名を叫びながら手を伸ばすなど、『BLACK』を思わせる演出もあり、否が応にも今後の展開を期待させる。

 

 

 

 

しかし、しかしだ。どうにもこのキングストーン周りが、どうにも、どうしても、初見時は意味不明なのだ。

 

 

 


光太郎と信彦の体内にあると思っていたキングストーン。しかし、1つは実は葵のネックレスになっており、「え?光太郎の体の中にはもう無いの?じゃあBLACKSUNが特別強いのは何故?てか何故変身できてる?何故生きてる?」と混乱。

 

 

 

 

更には、信彦の体内に隠されてると思っていたもう1つ。今作の信彦は50年間幽閉されており、その間ずっと三神官からキングストーンの所在を問い詰められていた。「え?目の前の人(信彦)が持ってますけど……もしかして今作の三神官は世紀王にキングストーンが埋め込まれていることを知らない?いや、そんな訳は……あ、既に信彦は手中にあるから、BLACKSUNが持ってるもう1つのことを訊いてる?」「え?総理が持ってる?シャドームーンの体から取り出したの?じゃあ何で生きてるの?」などなど、こちらも混乱。

 

 

 


どうも今作のキングストーンは、2つを揃えると創世王を継承できるというところは原典通りなのだが、その他のところはまるで違うらしい。

 

 

 

 

ちょっと気合を入れれば腹部から自由に取り出しが可能であり、しかも、体外に出してもBLACKSUNやSHADOWMOONへの変身、当人らの生死には影響が無いらしい。

 

 

 

 

原典通りの「体から取り出される=BLACK(SHADOWMOON)の力を失う、または死ぬ」というようなものでは全くないのだ。原典の『BLACK』通りの設定を頭に入れて観ると、大変混乱するのだ。

 

 

 


だからキングストーンが現代編のヒロインである葵のネックレスになっていたり、三神官が信彦にキングストーンの所在を問い詰めたり、実は総理が隠し持っていたり、というような場面を観る度に、頭の中に?マークが物凄い勢いで増殖していった。

 

 

 

 

しかも、今作は現代編と過去編が交互に描かれる構成であり、そのどちらでもキングストーンがキーアイテムであり、登場人物は皆キングストーンを欲しており、そしてその所在は両時代でコロコロ変わっていく。

 

 

 

 

これは原典の『BLACK』を知っている人ほど理解に時間がかかるだろう。

 

 

 


そして、原典の『BLACK』を知らない人にとっても、キングストーン周りのアレコレは意味不明だっただろう。

 

 

 

 

とにかく、とにかくキングストーン周りがフワついているのだ。文字にして整理したりすると一応の辻褄は合っているのかもしれないが、初見時の意味不明さ、地に足の着いていなさたるや……。鑑賞済みの方なら言葉よりも肌感覚で分かっていただけると思う。

 

 

 

 

そんな中でも登場人物たちはキングストーンを巡ってドンドンテンションを上げていくので、「よく分からないのに画面の中の人たちは皆盛り上がって怒鳴り合っている」という、地獄のような視聴体験が生まれる。

 

 

 

 

初見時、この意味不明なキングストーン周りのせいで、物語に全く没入感を抱けず、どんな気持ちで観ていけば良いのかが分からなかった。

 

 

 

 

そして、キングストーン周りがフワフワしていることの最大の弊害が、BLACKSUNとSHADOWMOONの対決に全く「宿命の対決」というものを感じられなくなってしまったことだろう。

 

 

 


キングストーンの扱いが原典よりも軽くなってしまった(にも関わらず劇中では重要アイテムとして描かれる)ことにより、BLACKSUNもSHADOWMOONも、ハッキリ言って、三神官やビルゲニアと同格の怪人に成り下がってしまったのだ。

 

 

 

 

キングストーンがそこまで重要じゃない(何度も言うが、にも関わらず劇中では重要アイテムとして描かれる)のに、キングストーン無しでも変身できるし力も行使できる、そのうえ他の怪人と同格の2人が向かい合っても、全く「宿命の対決」に感じられないのだ。

 

 

 

 

設定やワードの意味合いが原典と異なっていても構わないのだが、異なっていたということが分かり難い上に、異なっていたことで原典の良さを損ねてしまっているのは、果たしてどうなのだろうか。せめて、諸々違っていても、2人の対決にはゾクゾクしたかったというのが本音だ。

 

 

 

 

 

■アクションが地味

 

 

 


もう1つ残念だったのが、アクション面だ。シリーズ50周年記念、Amazonプライムビデオによる独占配信。同じ周年作品であり、配信先も同じ仮面ライダーアマゾンズのアクションは大変素晴らしかったので、今作にはそこからの更なる飛躍、進化を期待していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、しかしだ。残念ながら、アクションが地味すぎた。

 

 

 

 

グロテスクさを追い求めるのは良いのだが、手足や臓器や首をもいでリアルにドチャッと倒れるだけで、「仮面ライダーのアクション」としては全く面白味を感じられない。バイオレンスがただ単にバイオレンスなだけで、「エンタメとしてのバイオレンス」になっていないのだ。

 

 

 

 

ライダーと怪人の対決はそんな感じなので、もうBLACKSUNとSHADOWMOONのライダー同士の対決に期待するしかないのだが、2人の対決のアクションもパッとしない。

 

 

 

過去編において、光太郎と信彦が森で組み手をするシーンがある。パンチとキック、マウントをとって顔の側面を殴打する。人間の格闘術として、納得感はある。

 

 

 

 

変身後もそんな感じなのだ。バッタの怪人同士の対決なのに。そりゃ変身前と変身後で動きに違いがないのはリアルなんだろうけど、せっかく持ってる旨味を殺していないか。大人向けだからって、リアリティのある殺陣ばかりでは怪人の能力を活かせない。観ていて面白くない。

 

 

 

 

極めつけは、最終回の光太郎(BLACKSUN)と信彦(SHADOWMOON)の最後の対決だ。ついさっきまで「創世王にならない」と言っていた信彦が「俺は創世王になる」的なことを言い出したのでもう笑うしかないのだが、その後の2人の変身が鏡合わせになっているのは良かった。そこから、まぁ、また地味目なアクションが続くのだが、ここでBLACKSUNが最終回までとっておいたライダーキックを敢行。

 


これには私も「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」と燃えたのだが。

 

 

 


なんとこのライダーキック、特に致命傷にはならない。むしろ、同時にSHADOWMOONが突き立てた剣がBLACKSUNに突き刺さり、BLACKSUNの方が倒れてしまう。

 

 

 

 

正気か?????

 

 

 

 

観ていて全く燃えないし、火が点きかけてもすぐに消火されるアクション。面白くなかった。

 

 

 

 

■総括

 

 

 

と、まぁ、ここまで割と辛辣に書いてきたのだけれど、勿論、今作にも良いところはあった。

 

 

 

 

ヘイト描写は観ていて本当に嫌だったし、制作陣の想いも伝わって来た。キャストの演技、存在感は凄まじかった。

 

 

 

 

でも、先述の2点が大きく没入感を削ぎ、それらの良かったところも完全に封殺してしまった。

 

 

 

 

巷では今作のテーマ(差別)に関しての議論も盛んに行われていて、その意味では今作は成功したのかもしれない。

 

 

 


しかし、個人的には、そこを語る元気、余力も無い。否、失くされてしまった。これが正直なところだ。

 

 

 

 

散々だ。

 

 

 

 

仮面ライダーBLACK SUN』は、私にとっては散々だった。

 

 

 

 

そう、散々だよ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

散々……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SANZAN

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SUN ZAN

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう!!!これじゃ仮面ライダーBLACK SUN ZAN(散々)だよ!!!!!(これが言いたかっただけ)(テレレレー!!!!!)(散々∞の旗)