※本記事には、『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』のネタバレが含まれます。
最新鋭スーツ 編 映画『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』15秒予告(6.28世界最速公開)
『アベンジャーズ エンドゲーム』から、たった2ヶ月後の公開となった『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』。
『エンドゲーム』を観たとき、「『キャプテン・マーベル』から1ヶ月しか経ってないのに、もう次の作品が観られるなんてなぁ」、と不思議に思ったものですが、今回もそんな気持ちでした。
という訳で、あの『エンドゲーム』の“その後”を描いた本作は、どのような仕上がりだったのか。
結論から言うと、エンディングまでは大満足、エンディング後に不満ありで、トータルで言えば満足、といった具合です。
以下、言いたいことをつらつらと書き綴ります。
■ピーター・パーカーの“3つの戦い”
本作では、ピーター・パーカーは“3つの戦い”に挑みます。
“トニー・スタークの思いを受け継ぐという重責との戦い”
“MJを巡る恋の戦い”
“人々を欺き、自らの命を狙うミステリオとの戦い"
以上の3つです。
本作は、この3つの戦いがそれぞれ魅力的に描かれ、素晴らしいバランスになっています。
1.“トニー・スタークの思いを受け継ぐという重責との戦い”
これは予告編などでも描かれていましたね。
『エンドゲーム』終盤で6つのインフィニティ・ストーンの力を使い、その命を散らしたトニー・スターク。
MCUの看板とも言える彼にその力と正義感を見出され、アベンジャーズの一員として認められたピーター・パーカー。
師であり、父親のようでもあったトニーの思いを継ぐということ、それを望む世間からの視線、そしてダメ押しのようなニック・フューリー襲来。
数々のプレッシャーに耐えかねたピーターは、「次のスタークに託す」というトニーのメッセージと共にハッピーから渡されたサングラス(人の通信データを盗み見できたり人工衛星から攻撃用ドローンやらを呼べる物騒な代物)を、「自分より経験豊かな大人」であるミステリオ(実はヴィラン)の方が所持者として相応しいと、逃避的に渡してしまいます。
ここで面白いのが、ピーターはトニーのサングラスを手放す為に、自分の頭の中でアレコレ理屈をこねて、しかもそれを全て自分の口で解説してからミステリオに渡すんですよ。
ピーターがこねくり回した理屈とは、
・「次のスタークに託す」というメッセージの“次のスターク”とは自分ではない
・そもそも自分はまだ子供で、高校生で、とても“次のスターク”ではないし、なれない。
・トニーの「次のスタークに託す」というメッセージは、「“次のスターク”をお前が見つけて渡せ」、という意味に違いない
・自分より経験豊かな大人であるミステリオこそが“次のスターク”に相応しい
というものです。これを全部自らの口で語ります。
ミステリオは子供のピーターがヒーローをやってることに同情してくれてますから、「無理、耐えられない」の一言で手放しても良いわけですよね。
でも、頭の中でこねくり回した理屈を全部言う。これはある種ピーターの罪悪感の表れであり、自らの体面を守ろうとする言い訳なんですよね。
逃げる訳じゃないし、自分は役目は果たしたじゃないか、と。
この辺の弱さの表出と意地っぱりな感じこそが、ティーンエイジャーであるピーターだからこそできる展開であり、他のヒーローではできないドラマだと思いました。
そして逃避の代償は、実はヴィランだったミステリオにトニーの遺産が渡るというあってはならない事態と、真相を知った自らが殺されかけるというものでした。
信じた者と目に見える全ての光景に騙され、何も信じられなくなったピーター。
迎えに来たハッピーが本物だと分かったときの安堵の涙とそこからの抱擁は、観ているこっちも思わず泣きそうになってしまいました。
しかし彼は未熟なだけのティーンエイジャーではなく、街の人々を救い、サノスの軍勢と戦い世界をも救った“親愛なる隣人”スパイダーマンなのです。
ハッピーから聞かされたトニーの本意をきっかけに再起する姿は、前作『ホームカミング』で瓦礫の下から「スパイダーマンだろ!!!」と自らを奮い立たせて立ち上がった姿と重なりました。
また、新スーツを考案するピーターを見守るハッピーの眼差しが、かつてのトニーを見るような温かいものだったのも良いんですよねぇ……。
2.“MJを巡る恋の戦い”
いや、ホント、微笑ましかったですよ。
物語が進むにつれてピーターが可哀想な目に遭いまくるので、ヒーローもヴィランも関係ない友人たちとのシーンは心休まるんですよね。
特に、オタク友達のネッドがピーターよりも一歩先に大人の階段を登ってしまうくだりが最高過ぎて(笑)
ズッ友だと思っていた友人に置いてけぼりにされてしまったピーターの何とも言えない表情が笑えました。
また、今作からヒロインに昇格したMJも、変わり者でありつつ芯の強い女の子として描かれていて、ピーターが好意を持っても不自然に感じない魅力的なキャラクターになっていました。
そして恋のライバル、ブラッドは…………絶妙にカッコ悪くてダサい(笑)もうちょい悪役として活躍させてあげても良かったかもですね。(もしかしたら次回作あたりで出世するのかも)
日常パートが魅力的に描けているからこそ、ネッドやMJが標的にされた時のピーターの奮闘がカッコ良く見えるんですよね。
“親愛なる隣人”として、まず一番近くの人たちを守る、と。
3.“人々を欺き、自らの命を狙うミステリオとの戦い”
良き先輩ヒーローであり理解者かと思われたミステリオは、やっぱり悪い奴でした。
しかもまたトニー・スタークがキッカケで誕生したヴィラン。死してなお敵を作るトニー・スターク(笑)
まさか『シビル・ウォー』冒頭で印象的だったあの技術が、同じく『シビル・ウォー』でMCUに初参戦したスパイダーマンの単独映画の敵になるとは思いもよりませんでした。
それらしい事を言いながら、実態は名声が欲しいだけの目立ちたがりやであるミステリオは、極悪人でありながらその強すぎる信念から観客にある種の共感を抱かせたサノスとは対局の位置にあるヴィランでした。
正直に言って、小物(笑)
しかし、純粋なピーター少年を腕っぷしというよりは悪意と策略で以て追い詰めるその姿勢はまさに“怖い大人”であり、そういう意味では『ホームカミング』のヴァルチャーと同じでピーターが乗り越えるべきヴィランとしては最高でしたね。
それにしても、幻覚(超高精細な立体ホログラム)の中に武器(ドローン)を仕込んで攻撃してくる戦法を見て、『家庭教師ヒットマンREBORN!』の六道骸を思い出したのは僕だけだろうか……(遠い目)(幻覚の中に石つぶて仕込ませてたよね)(懐かしい)
スパイダーセンスを全開にしてドローンを破壊していく最終決戦は手に汗握りました。
背景が目まぐるしく動き、観ているこちらも最後まで油断できなかったです。
■ただ一つの不満
と、まぁ、ここまで大満足だったのですが、一つだけ大きな不満がありまして…………
あのラストは!!!!!あまりに!!!!!ピーターが!!!!!可哀想でしょ!!!!!
ミステリオ陣営の生き残りが流した超高品質捏造動画によって、スパイダーマンが悪者にされた挙げ句、その正体がピーターであることもバラされてしまいました。
いや、まあ、続編への前振りだっていうのは分かるんですけど……。
やっぱりこう、2時間ずっと観て、応援してきたことが、全部台無しになっちゃった感じがするんですよね。
1本の映画は1本の映画として、そのまま気持ちよく終わらせてほしいというか……。
そこまでの出来が凄く良かっただけに、惜しいところです。
とはいえ、これは僕の好き嫌いの問題なので、作品の品質にはなんら影響は無いと思います。
■総括
『エンドゲーム』の後発作品第一弾として申し分ない出来でした。
安定と進化のMCU。オススメです!!!!!