イータイコト・イータイ

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「坂本監督の特撮には“巨大感”が無い」という風潮に反論したい。【ウルトラマンZ第7話】

 

映画監督 坂本浩一 全仕事 ~ウルトラマン・仮面ライダー・スーパー戦隊を手がける稀代の仕事師~

 

 

 

2013年の『ウルトラマンギンガ』から現在放送中の『ウルトラマンZ』まで、毎年作られているウルトラマンTVシリーズ、所謂“ニュージェネレーション”シリーズ。

 

『ギンガ』の頃は予算や制作期間の少なさが画面から感じられたものですが、新作が作られる度に映像のクオリティが上がっていき、1ファンとして大変喜ばしく思っています。

 

特に前作『ウルトラマンタイガ』や今作『ウルトラマンZ』は映像としての特撮が面白く、毎回「これは!」と思わせてくれるカットがあります。

 

そんな中、先週放送の『ウルトラマンZ』第7話「陛下のメダル」において、「ウルトラ史に残る」と言っても過言ではない圧巻の映像がありました。

 

 


『ウルトラマンZ』第7話「陛下のメダル」-公式配信- "ULTRAMAN Z" Episode 7 -Official-

 

 

15分48秒目あたりから始まる、ウルトラマンゼット&ジードのタッグと、スカルゴモラの真正面からの激突!それを真下からグリグリ動くカメラが延々と撮り続ける!ぶつかり合うウルトラマンと怪獣だけでなく、信号機や電線、歩道橋やビル、巻き上がる土煙や瓦礫など、全てが同じ画面の中に収まる中、白熱の攻防が続いていく!

 

凄すぎますよコレは!その直前の火炎と電撃で街を壊しながら向かってくるスカルゴモラだけでも超豪華な映像だったのに、その直後にコレですからね。

 

思わず「うひょ〜〜〜!!!え……?あ……?ちょ……うひょおおおお〜〜〜〜〜!!!??」と叫んでしまいました(笑)

 

この一連のシーンは、アクションの激しさもさることながら、「ウルトラマンや怪獣はこんなに大きいんだ!」という“巨大感”をハッキリと表しています。


今回の監督を務めたのは、今や日本の特撮界にいなくてはならない存在と言っても過言ではない坂本浩一氏。

 

 テンポの良いキレッキレのアクションと燃えるシチュエーションで大人の特撮ファンをも童心に帰らせてくれるお方です。


個人的には大好きな監督なのですが、一方で「坂本監督の特撮には“巨大感”が無い」と言われることも多い方です。

 

まぁ、そう感じる方の気持ちも分からないわけではないのですが、個人的にはこの批評、賛同しかねる立場でして。

 

今回の映像もそうですけど、実は坂本監督ほど“巨大感”にこだわってウルトラマンを撮ってる人っていないと思うんですよね。本記事では先述の批評に対して、具体例を挙げて反論したいと思います。

 

 

 

■『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』

 

 

坂本監督が日本の特撮ファンにその名を知られるようになったキッカケと言えば、やはり2009年公開の『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』でしょう。

 

 

 

 

 

それまで海外を主な拠点にして活動されていた坂本監督が、日本で初めて監督を務めたウルトラ映画です。

 

ミニチュアセットをほとんど用いず、CG合成による背景で光の国や怪獣墓場を表現したり、ワイヤーアクションでウルトラマンたちをビュンビュン飛ばしながらアクションをさせたり、という、当時としてはかなり斬新な映像に挑戦した作品です。

 

そして、今日まで続く人気キャラ、ウルトラマンゼロウルトラマンベリアルのデビュー作でもあります。

 

今作は当時、多くのファンから喝采を持って迎えられましたが、一方で「ウルトラマンや怪獣たちに“巨大感”が無い」という批判もありました。

 

 そんな今作の印象が、今日においても「坂本監督の特撮には“巨大感”が無い」と言われている原因なのでは、と思います。

 

また、もともと坂本監督は海外で『パワーレンジャー』シリーズを長年手掛けており、『ウルトラ銀河伝説』以降は仮面ライダースーパー戦隊の監督を務めていたため、巨大ヒーローよりも等身大ヒーローの人、という印象が強まっていったのではないでしょうか。

 

しかし私は、当時『ウルトラ銀河伝説』を初めて劇場で観たとき、「こんなに“巨大感”のあるウルトラマン映画は初めてだ!」と大いに興奮していました。

 

そもそもワイヤーアクションが多用されたシーンはウルトラ戦士やベリアル、怪獣たちなど、もともとが巨大なキャラクターたちの戦いであり、大きさの比較対象となる人間が存在しません。戦いの舞台も、我々の慣れ親しんだビルなどの建造物が無い光の国や怪獣墓場でした。つまり、この一連の戦いにおいては“巨大感”を出す必要がないのです。

 

じゃあ、人間が絡むシーンは?というと、これが凄いんですよ。

 

まずは惑星デントでのレイが操るゴモラザラガスの戦い。岩山地帯で展開する2大怪獣の激突を、下からカメラが捉え、そのまま周囲をグルグルと回転。それだけでも「デカい!」となるのですが、同じ画面にレイが映ることで2大怪獣の“巨大感”が倍増します。

 

次に、プラズマスパークのコアをベリアルに奪われ、雪と氷の世界と化してしまった光の国のシーン。そこを訪れたレイとミライを襲うドラコ、ベムスターサラマンドラの3大怪獣!

 

上空からドラコが吐いた火炎弾を避け、雪の斜面を滑り落ちていくレイとミライを襲うベムスター、その巨大感たるや!斜面スレスレを飛ぶベムスターに、レイが発泡するところなんか、特に凄いですよ。

 

 斜面を滑り落ちたレイとミライにサラマンドラが襲いかかるのですが、地中から氷をブチ破って出現するシーンも物凄い“巨大感”です。サラマンドラもさることながら、手前に落ちてくる氷塊が更に“巨大感”を出しています。

 

このように、巨大なウルトラマンや怪獣と比較する対象となる人間大の登場人物が絡むシーンでは、一貫して“巨大感”を感じさせる演出が成されているんですよね。

 

 

 

■地球が舞台となるTVシリーズ

 

 

残念ながら『ウルトラ銀河伝説』以降、坂本監督はしばらくウルトラから離れるのですが、2014年の『ウルトラマンギンガS』で久しぶりに復帰しました。しかも初のTVシリーズメイン監督として!

 

 

 

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地球が舞台である今作では、新たな手法で“巨大感”の演出がされていました。オープンセットでの煽りアングル撮影です。

 

野外にセットを組み、青空の下で戦うウルトラマンと怪獣を真下から撮り、同時に砂や瓦礫を周りに投げまくることで、“巨大なモノ同士が戦っている”という“巨大感”が表現されています。

 

オープンセットで撮る手法は今作が初めてというわけではないのですが、国内のウルトラシリーズでは多用されてきませんでした。海外の『ウルトラマンG』や『ウルトラマンパワード』で使われていた印象が強いですね。

 

屋内セットとの色調の違いなど、問題点もあるのですが、シンプルながら“巨大感”の演出にはもってこいの手法で、当時は「やられた!」と思いましたね。

 

個人的に坂本監督のこの手法が一番バチッと決まったと思っているのは、『ウルトラマンX』第4話の対ベムスター戦です。ベムスターと組み合いながら膝蹴りを叩き込むエックスの“巨大感”たるや……最高です。

 

 

 

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■まとめ 

 

 

そんなこんなで、坂本監督と“巨大感”について考えてきました。全てが上手くいっているとは思いませんが、それでも坂本監督が“巨大感”をないがしろにしているとは思いませんし、むしろ徹底的にこだわっている気がしますね。

 

そしてそのこだわりの一つの終着点ともいえるのが、『Z』第7話だった気がします。

 

ますます進化する坂本監督の“巨大感”演出。これからも楽しみです。

 


※私は戦隊シリーズはほとんど観たことがないので、『獣電戦隊キョウリュウジャー』などの坂本監督の演出に関しては触れられなかったのが残念です……!すみません。