※この記事を書いた人間は本気でそう思っているが読んだ人はそう思わないでくれ……いやそう思ってほしいけどそう思った場合の責任は筆者にはとれませんので……
『デパプリ』が、本気で『ダイナ』を超えに来た。心からそう感じたとき、涙が込み上げ、私は思わず服の袖でそれを拭った。
『デリシャスパーティ♡プリキュア』(以下、『デパプリ』)が、『ウルトラマンデッカー』(以下、『デッカー』)と並び、『ウルトラマンダイナ』(以下、『ダイナ』)25周年記念作品であるということは、以前この記事で解き明かした。
この記事を書いてから、早いもので3ヶ月ほどが経つ。あれからも私は、ずっと『デパプリ』を、ダイナ25周年記念目線で見守って来た。毎週繰り広げられるダイナリスペクト、オマージュの数々にはいつも目頭を熱くしていたのだが、『デパプリ』制作陣、ここ2週間で一気に仕掛けてきた。『デパプリ』は、『ダイナ』を超えに来た。今回はそれを語らせてほしい。
■和実ゆいの喪失
『デパプリ』を『ダイナ』25周年記念目線で見守って来た私が、最も恐れていたこと……それは、「主人公の喪失」という、『ダイナ』最終回の再現である。
『ダイナ』最終回において、主人公であるアスカ・シン/ウルトラマンダイナは、グランスフィアを打倒した際に生じたワームホールから逃れることができず、別宇宙へと飛ばされてしまう。作中では「アスカは光となった父・カズマに追いついた」「今度はスーパーGUTSがアスカを追いかける」といったことが描かれ、語られてはいるのだが、やはり「必ず帰る」と言っていた主人公が「負けるかあああああ!!!!!」と叫びながら吸い込まれて行ってしまうというのは、視聴者の目には「負け」に映ってしまったのではないだろうか。今でこそ後続作品への客演のお陰でアスカが生きているということは周知の事実となっているが、当時は「主人公が死んで終わってしまった」と受け止められても仕方のない結末であった。(脚本の長谷川圭一さんはハッピーエンドのつもりで書いたそうなのだが……)
兎にも角にも、当時から賛否両論の結末であった『ダイナ』。『デパプリ』がダイナリスペクト・オマージュにかける熱意をあらぬ方向に向けた結果、和実ゆい/キュアプレシャスが皆の前からいなくなってしまう展開が来るのではないか……?そのような不安が、私の胸の中には常にあった。流石にそれは御免こうむりたい展開である。もし仮にそのような事態となった場合、私はショックで本当に寝込んでしまう。
そして、運命の時がやって来た。12月4日放送、第38話『おばあちゃんに会える!?おむすびと未来へのバトン』。
レシピ本強奪事件の真相を知っているかもしれないという人物・ジンジャーに会うため、ゆいたちは20年前のおいしーなタウンへとタイムトラベルを敢行する。そこには、ゆいが人生の目標とする、今は亡き祖母・よねの姿もあった。
生前のよねを前にして、ゆいの息が止まる。これまで並大抵のことでは動じない胆力を見せてきたゆいが、息を止めて立ち尽くしてしまう。この瞬間、私も息が止まった。「マズい!」と反射的に思った。このままでは、ゆいは帰って来られなくなってしまう。
やめてくれ。ゆいを連れて行かないでくれ。これまで『デパプリ』に込められてきた『ダイナ』オマージュには敬意と感謝を抱いているが、何もあの最終回まで再現しないでくれ。子どもたちからヒーローを奪わないでくれ。頼む。頼むよ。懇願するように、縋るように祈った。
その時であった。華満らん/キュアヤムヤムと菓彩あまね/キュアフィナーレがゆいの手をとった。ハッと正気に戻るゆい。そこに芙羽ここね/キュアスパイシーが近づく。
「大事な人に会うなら、明るい顔色が良いと思う」
そう優しく語りかけ、そっとピンクのリップをゆいの唇へ塗る。
「ありがとう」
ゆいは、帰って来られたのである。ここねとらんとあまねが、引き留めてくれたのである。
あの時、帰って来られなかったアスカ。それを見ていることしかできなかったスーパーGUTSの皆。いくら明るく前向きな言葉をその後に続けても、やっぱりあの時の僕たちは、怖くて悲しかった。
ゆいとここねとらんとあまねは、あの日アスカやスーパーGUTSが出来なかったことをしたんだ。そのような想いが胸に宿った瞬間、私は一時停止ボタンを押した。感動で、ちょっと立ち止まった。
ありがとう。『デパプリ』制作陣、ありがとう。たとえ一瞬でも貴方たちを疑い、責めようとした自分が恥ずかしい。私が抱いていたような懸念、不安なんて、『ダイナ』を心から愛している貴方たちにはとっくに分かっていたことだったんだ。ありがとう。リスペクト、オマージュだけでない。『ダイナ』を愛しているからこそ、『ダイナ』で叶わなかった、描けなかったことをやってくれたんだ。ありがとう。
■追いつくだけでなく、超える。
そして今日(12月11日)放送されたばかりの最新話「お料理なんてしなくていい!?おいしい笑顔の作り方」。
ゆいの友達・わかなはサッカー部で活躍するエース。そのわかなを応援するため、父・ましばは、睡眠時間を削って苦手な料理の腕を磨き、栄養バランスのとれた食事を作ってきた。しかしその無理がたたり、倒れそうになってしまう。ゆいはわかなを励まそうと祖母・よねの格言を引用しまくるのだが、料理が苦手な父のことで罪悪感を抱いているわかなの心に、料理に絡めたよねの格言は響かなかった。
今までゆいが語ってきたよねの格言は、多くの人たちを救い、導いてきた。しかし、今回はそれが通じないのである。よねを目標に生きてきたゆいは、そのことにショックを受ける。そして、「おばあちゃんの言葉ではない、自分だけの言葉」を見つけることの重要性に気づく。
ゆいは母・あきほの協力を得ながら、不器用ながらも自らの言葉を紡ぎ、わかなとましばのために力を尽くすのであった。
ゆいは祖母・よねを。アスカは父・カズマを目標に生きてきた。『ダイナ』はアスカが父・カズマに追いつくまでの物語であった。
そこに加えて『デパプリ』は、憧れの人に追いつくだけでなく、さらに"超える”ことまでを描いたのである。これは『ダイナ』のさらに先をゆく展開である。嬉しい。常に前へ進むことがネオフロンティアのスピリッツ。『デパプリ』はそれを体現したのである。(無論、TVシリーズでは父に追いついたところで終わったアスカも、後年の客演では様々な宇宙で活躍して人々の心に光を灯し続けており、とっくに父・カズマを超えているという点は書き加えておきたい)
ここ2週のデパプリは、本気で『ダイナ』を超えにきた。そのことを誰よりも喜んでいるのは、ダイナ本人、アスカであろう。奇しくも同じ週末、彼は『デッカー』の世界へやって来た。
去り際に見せたサムズアップ。これはウルトラマンデッカー/アスミ・カナタだけでなく、ゆいたちデパプリメンバーへ向けたものであったのかもしれない。私は、そのような気がしてならない。